借金の取り立て代行って違法じゃないの?
「借金の取り立て」という言葉にはどうしても怖いイメージがつきまといます。「怖い人に恐喝されたらどうしよう……」と、テレビドラマの1シーンを思い出す人もいるのではないでしょうか。しかし、実際の取り立て代行はそのようなものではありません。借金の回収サービスについて詳しく解説しましょう!
そもそも借金の取り立て代行業者とは?
銀行でも消費者金融でもカードローンなどを滞りなく返済しているうちは自社からの請求しか届きません。しかし、滞納を繰り返してばかりいると、ある日突然、見知らぬ会社から督促状が届くことになります。これがいわゆる取り立て代行業者で債権回収会社(サービサー)などとも呼ばれていますが、いったいどのような会社なのでしょうか。
取り立て代行業者は国が認可した専門業者
取り立て代行業者=債権回収会社とは、金融機関などから債権を譲り受けたり委託されたりして債権回収を行う会社のことです。じつは借金の取り立て代行をできるのは法務大臣が認可した債権回収会社、弁護士または認定司法書士のみというのはご存知でしたか?正規の回収サービス業者は国から許可を得ている専門業者なのです。
したがって、テレビドラマの1シーンのように怖い人がいきなり自宅に乗り込んでくるというようなことはまずありません。あくまでも法律にのっとった取り立てが行われることになります。
なかなかなれない債権回収会社
債権回収会社として認められるには取締役に弁護士を1名以上配置していて、資本金が5億円以上あり、暴力団と一切関係のない会社でなければいけません。正規の債権回収会社になれるのはほんの一握りなのです。
取り立て代業者の具体的な仕事内容
取り立て代行業者は借金を返すのが滞っている債務者に対して返済請求するのが仕事です。具体的には内容証明で支払いを督促する、支払い能力のない債務者に債務整理をさせるといった内容になります。
また、取り立て代行業者は銀行や消費者金融だけではなく個人の代理をつとめることもあります。個人間でお金の貸し借りをして、なかなか返済してもらえない時に提訴や強制執行などの法律的な手段を取るのも、取り立て代行業者の任務のひとつなのです。
違法な取り立て代行業者もいる!
本来、取り立て業者は業者や個人にかわって債権回収をする法律の専門家です。しかし、なかには違法な詐欺業者の回収サービスもあるので注意してください。詐欺業者は次のような特徴があります。
探偵業者が取り立て代行を名乗っている
取り立て代行ができるのは弁護士か認定司法書士で探偵業者は含まれません。にもかかわらず債権回収サービスをウリにしている悪質探偵業者は結構存在します。
こういった悪質探偵業者は個人間のお金の貸し借りに悩んでいる人に近づき、高額料金を前払いさせて何もせずに音信不通になるという手口を用います。探偵事務所のサイトを作るなどしていかにも正規の取り立て代行業者のように体裁を整えていてもだまされてはいけません。
法務省のホームページにのっていない
債権回収代行会社を名乗っている業者が正規なのか詐欺なのかを見分けるのはなかなか難しい時もあります。そんな時は法務省サイトの債権管理回会社の営業を許可した株式会社一覧をチェックしてみましょう。
もし、正規の債権回収代行会社ならばここに許可番号、営業許可年月日、称号、代表者、本店所在地、電話番号などが掲載されているはずです。詐欺業者のサイトにそれらしい許可番号がのっていても嘘ということもあります。必ず法務省サイトを参照するようにしてください。
取り立てのルールを守っていない
じつは借金の取り立て方法は貸金業法によって次のような禁止事項が設けられています。
- 午後9時から午前8時までの間に債務者の自宅を訪問したり、電話やFAXを送ったりする。
- 債務者の勤務先などを訪問したり、電話・電報・FAXを送ったりして、第三者に借金を明らかにする。
- 債務者の自宅・勤務先などを訪問し、退去して欲しいと伝えても退去しない。
- 貼り紙、立て看板などを残して債務者が借金していることを第三者にバラす。
- 他社から借り入れをして借金を返済するように迫る。
- 債務者の家族に取り立てを行う。
- 債務整理をした後の債務者に対して取り立てを行う。
もし、これらの禁止事項を行うならば100%詐欺業者と考えられます。たとえ正規の業者でもこういったことをすれば登録取り消し、業務停止処分は免れません。
違法な取り立て代行業者に出会ってしまったら
もし、違法業者に取り立てを迫られてもけっして反応してはいけません。個人で対応するのは難しいので必ず弁護士などに相談するようにしてください。その際、次のような点に注意しましょう。
違法な取り立ての証拠を残す
貸金業法のルールを破っているという証拠を残すようにしてください。スマホを使ってこっそりとやりとりを録音するのもよいでしょう。恫喝などを音声で残せれば警察の介入も期待できます。すでにいくらか違法な取り立てに応じてしまったとしても、弁護士に相談すれば取り戻すことも可能です。
債務整理専門の弁護士に依頼する
違法な取り立てに関する問題は債務整理専門の弁護士が強みを持っています。詐欺業者に今後返済はしないと伝え、これまでの返済に関する返還請求なども代行してもらえるのです。詐欺業者への刑事告訴・告発を考えている人もぜひ相談してみてください。
名誉毀損や業務妨害罪になることも
詐欺業者が勤務先に取り立ての電話をかけてきたならば名誉毀損、業務妨害罪などにあたる可能性があります。またテレビドラマのように「臓器を売って返済しろ」などといわれたならば恐喝罪、脅迫罪になることも。その他、住居侵入、不退去罪となる場合もあるので必ず証拠は残しておくようにしましょう。
正規の取り立て代行業者から連絡が来たらすべきこと
一方、正規の取り立て代行業者と判断できるようならば、連絡を無視してはいけません。できるだけ迅速に対応するようにしましょう。
差し押さえを防ぐ!
取り立て代行業者すなわち債権回収会社から連絡が来るということは、差し押さえの一歩手前ということです。督促を放置していると、給料の4分の1を完済するまでずっと引かれ続ける給料差し押さえにいつなってもおかしくありません。
そうなって初めて取り立て代行業者と交渉をしても、差し押さえが取り下げられることはまずないでしょう。できるだけ早く取り立て代行業者に電話をして、今後の支払いについて話し合うようにしてください。誠意をもって説明すれば分割払い、遅延損害金の減額に応じてもらえることもあります。
弁護士に相談する
取り立て代行業者は法律の専門家です。恐喝まがいの督促こそありませんが、いつでも法的な手段で債権を回収しようとしています。支払い方法の話し合いで折り合いがつかなければ裁判を起こしてくることもあるのです。
裁判に出頭しなければ業者の主張が全面的に認められてしまいます。もし、裁判沙汰になりそうならばやはり弁護士に相談するのが得策です。どうしても返済が難しいならば自己破産などの債務整理が必要ですが、その場合にも弁護士にまかせれば安心といえます。
取り立て代行業者は正規か違法かしっかり見分ける!
最後に、今回の記事のおさらいをしましょう。
- 取り立て代行業者は弁護士、認定司法書士、国が認可した債権回収会社しか営めない。
- 取り立てには法律上のルールがある。早朝深夜の訪問などの迷惑行為、勤務先への電話など第三者に借金を明らかにする行為は違法。
- 違法な取り立て代行をしているのは詐欺業者。
- 違法業者に出会ったら証拠を残した上で弁護士に相談する。
- 正規の取り立て代行業者からの連絡は無視しない!返済が難しいならば早めに弁護士に相談を!
取り立て代行業者が正規のものだとしても詐欺だとしても、弁護士に相談するのが近道といえそうです。「正規の業者らしいが、やっていることは違法スレスレ」というような微妙な事態でも弁護士がついていてくれれば安心です。いずれにせよ、早め早めに行動するようにしてください。