ある日、家族の借金を背負わされて……
自分自身の信用情報はクリーンなのに、ブラックな家族を抱えている人もいるかもしれません。
「じつは家族が借金をしていた」と、知るだけでもショックは大きいものです。その上、滞納している分を肩代わりするよういきなり言われればパニックになってもおかしくありません。でも、あわてて支払ってしまうのは絶対にやめましょう。
「家族の借金にも返済義務はあるのだろうか?」と、心配かもしれませんが、信用情報はあくまでも個々人のものです。たとえ、違法な貸金業者に借金の肩代わりを迫られてもけっして動じないようにしてください。
「支払いたいけどお金がない」などと申し訳ない気持ちになることもありません。家族の借金に関する返済義務について詳しく解説します。
家族の借金を請求するのは違法?
正規の貸金業者ならば法律によって回収・取り立てに関するいくつかの決まりを守りながら営業しています。たとえば、次のような行為は違法なので、けっして対応しないようにしてください。
第三者への弁済要求は違法!
たとえ本人の返済が滞っていても、それを家族に請求するのは違法行為です。家族はもちろんのこと友人・知人などに「債務者が払わないので代わり支払って欲しい」と要求することは法律で禁止されています。
連絡の仕方が法に触れることもある
午前8時前、午後9時以降の電話、FAX、自宅訪問などによる催促も法律違反です。債務者はもちろんのこと家族への連絡でもNGとなります。また、いくら債務者に連絡がつかないからといって勤務先、実家などに電話などをかけるもの禁止事項です。ある日「家族の借金をかわりに支払って欲しい」というような電話が急に来ても、それは違法行為なので応じることはありません。
「家族に借りろ」も法律違反
「家族に借りて返済するように言われた」と、親兄弟や配偶者に相談されても対応してはいけません。貸金業者が新たな借金をして資金調達を要求することも違法行為だからです。お金を
貸してあげられないのは意地悪だからではなく、法律上おかしい話であることをしっかりと説明するようにしましょう。
家族に返済義務が発生するケースもある
家族に借金の肩代わりを要求するのは違法です。もし、そんなことをしてくる貸金業者ならば闇金融と考えて間違いないでしょう。ただし、以下のようなケースでは家族に返済義務が発生するので注意してください。
家族の借金の連帯保証人になっている
連帯保証人は法律上、債務者と同様の返済義務を追うことになっています。貸金業者は債務者、連帯保証人の好きな方に請求できるのです。「親子や兄弟だからといって簡単に連帯保証人になるものではない!」というのも、もっともといえます。
債務整理後も連帯保証人の義務は消えない!
自己破産、任意整理、個人再生などの債務整理を行えば、債務者は借金返済を減額または免除されます。しかし、債務者が債務整理をしても連帯保証人の返済義務は消えません。やむを得ず連帯保証人も債務整理……と、負の連鎖に陥るケースも少なくないのです。やはり、みやみに連帯保証人になるものではありません。
生活に必要な借金は配偶者にも返済義務あり
自動車ローン、住宅ローン、教育ローンなど家庭生活に必要な借金を夫が組んで返済が滞ったとしましょう。この場合は、たとえ連帯保証人になっていなくても妻にも返済義務が発生します。これを日常家事債務といいますが、カードローンでも食費・光熱費などにあてた分などは対象です。
貸金業者がすぐに返済請求することはない
日常家事債務は返済が何ヶ月も滞り裁判沙汰にまでなった時に発生します。1度や2度、滞納したとしてもただちに配偶者に請求が行くことはありません。
相続した借金も返済義務がある
相続というと貯金や不動産をイメージしがちですが、じつは借金も相続されます。何も手続きをしないでいると、家族の借金を返済しなければいけないことに!もし、マイナスの遺産の方が多いようならば財産放棄などの申し立てを裁判所に行うようにしてください。
3ヶ月位内に手続きを行う!
財産放棄の手続きは、自分が相続人と知ってから3ヶ月以内がタイムリミットになります。なかなか財産の全貌が明らかにならないようならば、少なくともプラスの遺産からマイナスの遺産を差し引いて相続する限定承認を行うようにしてください。
家族の借金が発覚したらしておいたいこと
基本的に家族が作った借金に関しては返済義務を負うことはありません。だからといって放置していても何の問題解決にもならないのも次いつです。返済以外で協力できることを積極的にやっていくようにしましょう!
どこからいくら借りているのか明確にする
返済が滞るまでになる人の多くが複数社から借金をしています。本人でさえ、全部でいくら借りているのかわからなくなってしまっているケースも少なくありません。そんな時は信用情報機関を利用するのもひとつの方法です。
日本には3つ信用情報機関がありますが、同時にすべてに開示請求してもまったく問題ありません。開示結果は遅くても10日程度で見られます。ただし、家族が開示請求することはできないので、必ず本人に手続きをするように自覚を促してください。
信用情報機関とは
信用情報機関とは、個人のクレジットカードやカードローンなどの契約、借り入れ、返済などに関する情報を収集し管理している組織です。通常、貸金業者、クレジットカード会社などに情報提供していますが、じつは本人ならば自分自身の信用情報を照会できるようになっています。
また、信用情報機関に登録されるのはあくまでも本人の信用情報のみです。したがって家族が借金問題を抱えていることが信用情報のキズになることはないので安心してください。
債務整理も視野に入れる
借金の現状をあらためて把握してみると「明らかに本人の返済能力を越えている」というケースもあります。そんな時は債務整理をすすめることも時には必要です。
債務整理には任意整理、民事再生、自己破産などがあります。任意整理や民事再生では借金そのものや月々の支払金額の減額が可能です。自己破産ならば支払義務が一切免除されますが、車も自動車も手放さなければいけません。いずれにせよ、どの債務整理も信用情報のキズになる点は注意してください。
債務整理は人生の終わりではない
債務整理をすると2度とクレジットカードもカードローンも利用できないのではと思っている人もいますが、それは誤解です。何年かはそういった期間もありますが、いずれはまた利用できるようになります。「債務整理は人生の終わり」などと思わず、人生をやり直すために有効活用することも時には必要なのではないでしょうか。
これ以上借金できないようにする
返済に困ってさらに新しい借金を重ねる……というのはよくありがちな悪循環です。そうなる前に家族がこれ以上借り入れをできないように手続きをとるようにしてください。
債務整理をすれば一定期間は新たな借り入れは自動的にストップとなります。しかし、どうしても本人が債務整理を拒否することもあるでしょう。そんな時は日本貸金業協会の貸付自粛制度を利用するという方法もあります。こちらは家族が「これ以上、借金されると家族の生活に支障をきたす」などと申告することも可能で、今後5年間の借り入れをストップすることができます。
家族の借金には返済義務はない!
最後に、今回の記事のおさらいをしましょう。
- 家族には借金の返済義務はない。もし請求してくるようならば違法業者!
- ただし、連帯保証人になっているなど家族の借金に関して返済義務が発生するケースもある。
- 家族の借金が発覚しても「返済しなければ!」と、あわてることはないが、信用情報の照会や債務整理をすすめるなど、いくつかできることはある。
借金を抱えてしまう家族は、必ずしも普段からお金にだらしない人ばかりではありません。まじめなタイプが家族に心配かけないようにと誰にも言わずに借金で生活費を補填し続け、返済能力を越えた金額にまでふくらんで初めて発覚するケースも少なくないのです。意外な人がじつは膨大な借金を作っていた時ほどショックも大きいものですが、あわてて肩代わりしようとするのはやめましょう。
もし、家族が借金をしていたとしてもかわりに返済しなければいけないことはありません。法律上も家族には返済義務はないのです。もし、家族に請求してくるような貸金業者ならば闇金融と考えて間違いありません。弁護士などにできるだけ早めに相談するようにしてください。