ローン契約をあとから取り消す方法は皆無! しかし「未成年契約の取り消し権」は例外です
未成年者がキャッシングやカードローンの契約・利用をした場合には「取り消し権」という権利が法的に定められています。
通常、キャッシング・カードローンを契約してお金を借りたら、それを一方的に「なかったことにしろ」なんて命令をする権利は誰にもありません。原則として借りた人はどんな事情があろうと、利息をつけて借り入れたお金全額を返済する義務があります。
しかしこの「未成年契約の取り消し権」は、数少ない例外的な措置となります。この権利を使えるチャンスは未成年のうちしかありませんが、もし利用することができたら「お金を借りる契約」を本当に取り消せるのです。
なぜ未成年はキャッシングのキャンセルが可能なのか?
学生は18歳から22~3歳くらいまでの年齢であることがほとんどです。18歳や19歳という未成年のうちは、正規のキャッシングサービスと契約するには親権者(保護者)または後見人の同意が必須となります。
この点は、民法の中で具体的に規定されているため、正規の貸金業者であれば無視することは絶対にできません。二十歳になるまでは、法律行為を実施するのは原則として親や後見人といった「法廷代理人」だからです。
未成年は契約者になれない! 不備があれば当然無効になる
したがって、万一カードローンの契約の段階で法廷代理人の承諾が、正規の手続きのもとで得られていないことが判明したら? そのときはその法律行為全体が否定されるのです。すでに何万円も借りていた場合でも、その融資の契約は全面的にキャンセルされます。
「未成年契約の取り消し権」でキャッシングを本当に無効にしたいなら、条件があります
では「未成年契約の取り消し権」を実際に使うとしたら、どんな条件が必要でしょうか。以下の条件にあてはまることが、大前提とされています。
契約したとき、未成年だった
カードローンの利用中に、二十歳になった場合でもかまいません。借りたときはもう成年に達していても、とにかく契約書にサイン・捺印した時点で何歳だったのかがカギを握ります。
法廷代理人が、実は承諾していなかった
親権者か後見人の同意書を提出するのが普通です。もしその点で不備があった場合は、取り消し権の対象となります(ただし、同意書の偽造や虚偽の記載があった場合は対象外です……後述します)。
契約したとき、未婚だった
実は未成年でも、結婚するとある程度の法律行為を自ら実施する権利があるものとみなされます。
よく知られている通り、18歳や19歳でも結婚は不可能ではありません。万一、カードローンの契約時に既婚者だったら取り消し権を使えなくなる可能性が一気に高くなります。
契約したとき、自身で企業経営等をしていなかった
未成年でも、いわゆる「代表取締役」になることは可能です。誰かから会社を受け継ぐこともできますし、自ら会社を立ち上げることだってできるのです。
そしてこのような経歴がある場合も、法的な責任能力をある程度有しているものと認められます。したがって取り消し権の対象外となる可能性が発生するのです。
契約した際に、悪意にもとづいた行為をいっさいしていない
ある意味で、これがいちばん大きなポイントと呼べるでしょう。この場合の「悪意」とは、虚偽の回答や書類への記載等を意味します。申し込みの時点で年齢や収入金額等をごまかしたり、法廷代理人の同意書を偽造したり……といったパターンが考えられます。このような悪意が発覚すれば、取り消し権は適用されません。
※便宜上「悪意」という言葉を用いていますが……たとえ当人に悪気がなかった場合でも、虚偽や偽造に自ら手を染めた場合は、容赦してもらえません。特に多いのは、親権者の同意書の偽造です。悪意に満ちた貸金業者に、同意書の偽造を言葉巧みにそそのかされたときでも、自分から親のサインをまねるようなことをしていれば、取り消し権は認められません。
その時点で、成人から5年以上が経過していない
これは、時効の概念を背景とした規定があるためです(法律用語の一種「消滅時効」に該当します)。満25歳になると「取り消し権を行使する資格が消滅した」と判断されるのです。
カードローン業者側の「未成年者契約の取り消し権」に対する態度とは?
この未成年者の取り消し権のことは、当然貸金業者だってよく知っています。その結果、未成年者へのキャッシングについては態度が以下のように二分されます。
1.未成年への融資に前向きではないのが一般的
未成年に貸しても、それを反故にされてしまうリスクがあるのでは、業者としては熱心に未成年に商売をする気分になれません。このため、もともと融資の条件に「20歳以上」という項目を設けて、未成年者を締め出しているところが圧倒的に多いのです。
2.未成年への融資をあえて推進している業者もいる
上記1.のような業者ばかりであることを踏まえて少しだけ、未成年者にも門戸を開いている業者もありますが、そのような事例はかなり限られますし、いずれにしても親の同意を必須条件に設けている場合が一般的です。
なお学生ローンなら、未成年を受け入れる傾向が強くなります。それでも、親の承諾を求めないケースは非常に少ないはず。
ヤミ金にはご注意を!完全に違法な金貸しです。
ちなみに、法を遵守していない不心得な貸金業者の場合は未成年者への融資に積極的に乗り出しているケースがときどき報告されています。いわゆる「ヤミ金」がそれにあたります。
ヤミ金をはじめ法制度を軽視しながらあこぎな商売をやっている会社なら、前述したように未成年者を巧妙な手段(取り消し権を使えないようなシチュエーションに誘い込んだ、という手口も報告されています!)で融資契約に誘導し、儲けようとするところが各地に存在する模様です。
「未成年者契約の取り消し権」は確かに未成年を庇護してくれます。しかし使う機会は実際には僅少のはず
未成年者契約の取り消し権は、確かに世間知らずで支払い能力に欠ける未成年の学生にとっては、非常に重要な法制度です。必要に迫られたときは、泣き寝入りせずに速やかに使うべきでしょう。
しかしもともと、未成年の間はお金を貸してくれるカードローンはきわめて少ないです。使う機会もめったにないでしょう。条件も厳しく制限されています。
- 現実には、未成年が親の同意書を出さないまま、業者から借り入れすることは難しい
- 親に黙ってこっそり同意書を準備して出したり、年齢や収入をごまかしたりしようものなら取り消しは絶対に無理
- 同意書の偽造を促したり、または同意書なしでも貸し付けてきたりするような悪徳業者は、そもそも法律を無視している。したがって、取り消しにもまず応じようとしない
- また、悪徳業者は口車で、未成年者に同意書の偽造や年齢詐称を自ら行わせて、取り消し権に頼れない状況に追い込んでくることがある
このような実態がある以上、決して使う機会はなかなかやってこないのです。「お金をどんどん借りて返せなくなってきたら、この手で借金を帳消しにしよう!」なんて都合のよい利用方法は許されていないのです。
※そもそも、取り消し権にできるのは「契約の無効化」です。利息を払う必要はいっさいなくなりますが、借りたお金は業者に返さないといけないはずです……ただし法改正がされた結果、返済の義務があるのは「現存利益」だけになりました。その時点で借りたお金が手元に残っていないなら、まったく返さなくてもよいという解釈が今では一般的。このため、取り消しが認められると返済を全然しないケースがほとんどのようです。
まとめ:「未成年者の取り消し権」はカードローンの返済から逃れられますが……認められない事例も多いので要注意!
未成年がもしキャッシングサービスで借金を背負うことなったら、その取立てから逃れるチャンスは法律が確保してくれます。しかし実際には、うまくいかなかったというケースだって多いのです。
- 未成年者は、法定代理人の同意なしでは正規の業者からお金を貸してもらえない
- もし親や後見人の承諾なしで未成年が借りたことが判明したら、「未成年契約の取り消し権」で無効にできる
- ただし取り消し権の行使には、法定代理人の同意や契約時の年齢以外にも条件が多い
- 特に、年齢のごまかしや同意書の偽造が発覚したために、取り消し権を使えなくなることが多い
- 正規のキャッシング会社は元来、未成年へのローンにはあまり乗り気ではない上に、親の同意なしでは貸さない
- ヤミ金のような法を守らない悪質な業者が、未成年を欺いて取り消しできない状況で契約させた事例が確認されている
取り消し権には細かな制限が課されているため、使えるチャンスが多いとはいえません。とにかく未成年の間は、その点を勘違いしないことが重要です。
※18歳や19歳の学生は、親の同意は必要ではあっても、きちんと法を遵守した業者から借りるのがいちばんです⇒18歳、19歳の未成年でもお金は借りられる?