借入先が個人でも金融会社でも借金には時効があります
借金は返済が完了するまで払わなければいけないもの、というイメージをお持ちの方も多いかと思いますが、実は借金にも時効があります。最後の返済から一定の期間が経過し、なおかつ所定の手続きを終わらせた場合、文字通り借金を「なかったこと」にできるのです。
ただ、だからといって最初から時効狙いで借金をするというのは全くおすすめできません。ルール上は時効というものがあるのは確かなのですが、実際にそれを成立させるのは極めて難しい、というかほぼ不可能と言っても過言ではないからです。借金の時効についてご説明します。
注意!借金の時効は狙って行うものではない!
「借金の時効を狙える!?」そう思った方々も少々お待ち下さい。
借金の時効を狙うのは現実的な判断ではありません。あまりにもハイリスクハイリターンな選択であり、当サイトでは全くおすすめできません。
どうしても返済ができないという場合は、債務整理を検討することをおすすめします。
そして仮に時効狙いに失敗した場合は、それまでの支払いを拒んだ期間中に発生した遅延損害金の山と退治することになります。
気がついたら借金の時効を迎えていた、もしくはもうすぐ迎えそう、という場合はいいのですが、そうでない場合は時効など最初から狙おうとすべきではありません。
その上で、ご確認をお願いいたします。
まずはキャッシング(借金)の時効の基本的なポイントを抑えよう
まずは借金の時効に関する基本的なポイントを抑えておきましょう。
借金とは簡単に言えば、債権者が将来債務者に対して債権を主張する権利を得ることです。
そして、その債権は一定期間行使しないと時効を迎えます。時効を迎えた後に債務者が特定の手続きを行うと、債権は消滅します。権利は使わないと消えてしまうものなのです。この時効を消滅時効といいます。
消滅時効の期間について
債権が消滅時効を迎えるまでの期間は、借金の種類によって異なります。銀行や消費者金融等からの借金(商事債権)は原則として5年、個人的な借金(民事債権)は10年です。これだけの期間経過して初めて、時効が成立したと主張できるのです。
銀行や消費者金融からの借金 | 5年 |
個人からの借金 | 10年 |
時効の起算日について
時効の起算日、つまり開始日時は条件ごとに色々と分岐します。この部分は少しややこしいので、順を追って説明いたします。
- 返済期日を定めない契約で、なおかつ途中で一度も返済をせずに、さらに借金の存在を認めなかった場合は、契約日の翌日が起算日となります。
- 返済期日を定めない契約で、なおかつ途中で一度以上返済をした場合、もしくは借金の存在を認めた場合は、返済日もしくは認めた日の翌日が起算日となります。
- 返済期日を定めた契約で、なおかつ途中で一度も返済せずに、さらに借金の存在を認めなかった場合は、返済予定日の翌日が起算日となります。
- 返済期日を定めた契約で、途中で一度でも返済をした場合は、支払った日から次の返済予定日の翌日が起算日
条件が色々と複雑に絡み合って見えるかと思いますが、基本的に業者からの借金の場合は返済期日が定められる契約となるため、上の2つは気にしないでいいことが大半です。下の2つさえ抑えておけば、まず間違いないでしょう。
なお、上記の条件の中にある「借金の存在を認める」とは、文字通り債務者が「私はあなたから借金をしています」と認めることです。具体的には
- 借金があることを認めた書面を提出する
- 1円以上の額を返済する
等が挙げられます。消費者金融が「利息だけでも払ってください」などと言って少額の返済を求めるのは、それによって時効の経過期間をリセットするためです。
時効を成立させるための手続きについて
上記の通り、時効を成立させるためには一定期間の経過が必要になるのですが、期間が経てば自動的に時効を迎え、借金が帳消しになるのかというと、そんな事はありません。借金を帳消しにするためには、上記の期間が経過したあとで、債権者に対して時効の成立を宣言する必要があるのです。これを「時効の援用」といいます。
時効の援用の具体的な方法は法律で定められているわけではありませんが、通常は時効援用通知書を配達証明付きの内容証明郵便で送る、という形で行われます。口頭だけだと証拠が残りませんし、普通郵便で送ってしまうと「そんなものは受け取っていない」と言い逃れられてしまう可能性があるからです。
時効援用通知書は個人でも作成できますが、決まった書式があるため、知識のない一般人が作成するのは難しいです。ここで失敗するわけには行きませんし、もし現時点で時効の援用の手続きをシたいと考えている場合は、必ず弁護士もしくは司法書士に依頼しましょう。報酬を支払う必要はありますが、借金が帳消しになることを考えれば安い買い物のはずです。
キャッシングの時効までのカウントがリセットされる条件とは
ここまで読んで「なんだ、借金を帳消しにするのって意外と簡単じゃん」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、それは大いなる誤解です。
消滅時効は状況によって伸びる(それまで経過した時間がリセットされる)事があるからです。たとえ4年11ヶ月間借金を払わず、その存在も認めずに逃げ回っていたとしても、債権者の行動次第でその期間がリセットされ、また一から数え直しということもありうる(というよりも、その可能性は極めて高い)のです。
債務の承認を行うとカウントがリセットされる
債務の承認を行うと、それまでのカウントがリセットされ、また一から数え直しとなります。債務の承認とは先程少し触れた「借金の存在を認める」ことです。借金の存在を認める行為を取ると、それまでのカウントがリセットされていますのです。だからこそ債権者は少しでも借金を払わせようとしてきますし、もし本気で時効の成立を狙っているのならそれに応じてはいけないということになります。
裁判上の請求が行われるとカウントがリセットされる上、時効が10年に延長する
裁判上の請求とは、訴訟や支払督促、調停などのことです。これは簡単に言えば債権者が裁判所を通じて債務者に支払を求める法的な手段の事です。言い換えれば、裁判所を通さない請求、例えば直接返済を口頭や書面で求めた場合はカウントはリセットされないということになります。
仮に裁判上の請求が行われた場合、それまでのカウントはリセットされ、また一から数え直しとなってしまいます。しかも、時効期間は5年から10年に伸びます。その借金が通常のものだった場合、債務者が裁判で勝てる可能性は0に近いです。。裁判所の判決や差し押さえは強制執行されますから、借り手の意志でそれらから逃れることはできません。
キャッシングの時効を狙っている間にも、遅延損害金はどんどん積み重なっていく
借金の返済が遅れた場合、遅延損害金という延滞金が発生します。これは返済期日までに返済しなかったことに対するペナルティみたいなものであり、元本に対して発生します。殆どの銀行や消費者金融はその利率を通常時の金利よりも高く設定しています。
金融機関名 | 通常金利(年率) | 遅延損害金金利(年率) |
---|---|---|
アコム | 年3.0~18.0% | 年20.0% |
プロミス | 年4.5~17.8% | 年20.0% |
アイフル | 年3.0~18.0% | 年20.0% |
SMBCモビット | 年3.0~18.0% | 年20.0% |
みずほ銀行カードローン | 年2.0~14.0% | 年19.9% |
三井住友銀行カードローン | 年4.0~14.5% | 年19.94% |
三菱UFJ銀行カードローン | 年1.8~14.6% | 借入時の金利と同じ |
楽天銀行スーパーローン | 年1.9~14.5% | 年19.9% |
ソニー銀行カードローン | 年2.5~13.8% | 年14.6% |
オリックス銀行カードローン | 年1.7~17.8% | 借入時金利+2% |
遅延損害金の計算方法は?
遅延損害金の計算方法は金融機関によって異なりますが、基本的には以下の式を採用しているところが多いです。
借入残高×遅延損害金利率÷365×延滞日数
例えば借入残高が50万円、遅延損害金利率が20%、延滞日数が30日の場合、遅延損害金は50万円×20%÷365×30=8219円となります。
この程度ならば大したことはないのですが、時効狙いで延滞すると延滞日数が長くなるため、遅延損害金の額も膨れ上がります。例えば借入残高が50万円、遅延損害金利率が20%、延滞日数が4年(1460日)の場合、遅延損害金は50万円×20%÷365×1430=40万円となります。仮に4年で時効のカウントがリセットされてしまった場合、手元には多くの遅延損害金の支払い義務だけが残るということです。
キャッシングで延滞を起こした事実は信用情報機関に登録されるので、時効は狙うべきではない
借金を延滞すると、信用情報機関という機関にそのことが登録されます。信用情報機関とは、加盟店(金融機関)から寄せられる個人や法人の信用情報(借金の借り入れ、返済などの情報)を一元的に集約、管理し、必要に応じて加盟店や本人に対して情報の提供を行う機関のことです。現在、個人の信用情報を管理する機関は3つあります。
あなたがクレジットカードを利用したり、銀行や消費者金融から借り入れを行ったことがある場合、そのことは信用情報機関に登録されているはずです。
そんなことに同意をした覚えはない、と思われるかもしれませんが、契約時に同意しているはずです。「同意した覚えが無い」という方は、契約書や申込書の内容をもう一度確認してみましょう。
クレジットカード会社や、銀行、消費者金融などは、個人の審査を行うときに信用情報機関の情報にアクセスします。そこに「この人は今まで一度も滞納せずにクレジットカードを利用し続けています」という情報があれば高く評価されるでしょうし、「この人は銀行カードローンを繰り返し延滞しています」という情報があれば評価は下がるでしょう。
時効狙いで延滞を繰り返すと、当然そのことも信用情報機関に登録され、その結果次回以降の審査に悪影響が出るはずです。このような現象を比喩的に「ブラックリストに掲載される」ということがあります。時効狙いで延滞を繰り返すのは、今後の借り入れという観点から見てもおすすめできません。
なお、信用情報の登録期間は、その情報の種類や信用情報機関の種類によって異なります。例えばCICの場合、申込情報は6ヶ月、クレジット情報は5年となっています。現在の自分の情報は開示請求をすればわかります。
どうしてもキャッシングの借入が返せない場合は、時効を狙うよりも債務整理を検討すべき
時効を狙うのは現実的ではないと言われても、返せないものは返せない、という方もいらっしゃることでしょう。そのような方には、債務整理の検討をおすすめします。債務整理とは、借金を合法的に減らしたり、あるいはなくしたりできる制度のことです。
現状、日本には
- 任意整理
- 特定調停
- 個人再生
- 自己破産
の4つの債務整理方法があります。最も有名なのはおそらく自己破産かと思いますが、実際に最も多く使われているのは任意整理だと推測されています。債務整理を行うと借金が大幅に減ったり、あるいはなくなったりしますが、それぞれデメリットもあります。
任意整理とは?
任意整理とは、文字通り借金を任意で整理することです。もう少し詳しく言うと、債権者と債務者が交渉によって借金を減らすことに合意し、債務者が残った借金を支払う手続きのことです。支払いは基本的には分割で行われますが、額が少ない場合は一括となることもあります。裁判所を通さない、民間の手続きです。
借金を減らすという債務者にとって一方的に有利な交渉に債権者が乗ってくれるのか、と思われるかもしれませんが、実際には債権者が乗ってくれることのほうが多いです。債権者としても返済の見込みがない相手をいつまでも借金漬けにしても意味がありませんし、債務者により債務の圧縮幅が大きい個人再生や自己破産などを選ばれると困るからです。
任意整理のメリットは、手続きがかんたんなことです。裁判所を通さない手続きなので、用意する書類も最低限ですみます。また、債務が複数ある場合、整理したくない債権者は除外して、一部の債権者だけ整理するということも可能です。
一方、デメリットは債務の圧縮幅が小さいことです。任意整理では将来の利息をカットできることが多いですが、元本まで減額してもらうのは、通常は難しいです。あくまでも現状それなりに収入があり、毎月の支払額が多少減ればなんとかなる人向けの手続きと言えます。
特定調停とは
特定調停とは、簡易裁判所が債権者と債務者の話し合いを仲裁し、返済条件の合意に至るように働きかける制度です。任意整理が債権者と債務者の私的な話し合いであるのに対して、特定調停はあいだに裁判所が介入するという違いがあります。借金の減額幅は基本的には任意整理と似たようなものです。
特定調停のメリットは、自力でも行うことができ、費用が安いことです。任意整理も厳密に言えば債務者自身で行うことは可能なのですが、現実的に考えた場合は弁護士を代理人として建てることが必要不可欠と言えます(素人が直接交渉してもまずうまくいきません)。
一方、特定調停は原則として本人が行うことになっており(弁護士を代理人とすることも不可能ではありません)、費用は1社に付き500円と非常に安価です。任意整理の費用が高すぎる、と思う場合は、特定調停も選択肢に入ります。
一方、デメリットは返済ができなくなった場合は直ちに強制執行される可能性があることです。任意整理後に返済がうまく行かなくなった場合、直ちに強制執行されることはありませんが、特定調停の場合は裁判所の作成した調停証書が存在するため、合意の成立には注意が必要です。
個人再生とは?
個人再生とは、裁判所を通して債務を減額する手続きです。裁判所に対して再生計画と呼ばれる書面を提出すると、原則として借金が5分の1になります。減額後の債務は、3年~5年掛けて返していきます。この支払が終われば、すべての債務がナシとなります。
個人再生ができるのは、将来において反復・継続して収入を得ることができ、なおかつ債務の総額が5,000万円を超えない人のみです。
個人再生のメリットは、債務の圧縮幅が大きいことです。任意整理では原則として将来の利息の支払いがカットされる程度であるのに対して、個人再生では債務が5分の1になります。借金の額が大きく、任意整理ではとても追いつかないという場合は、個人再生を選んだほうがいいでしょう。
また、個人再生は自己破産と異なり、住宅を手放さずに手続きを行うことができます。これを「住宅ローン特別条項」といいます。住宅ローンを債務整理の対象外とすることによって、住宅を守りながら債務を圧縮できます。ただしその場合、住宅ローンは以前と同じように返済し続けなければいけません。
一方、個人再生のデメリットは、返済をできるだけの継続した収入がないと、そもそも手続きができないことです。現状収入が一切ないという場合は、原則として後述する自己破産を選ぶことになります。
また、個人再生を行うと、官報という国が発行する機関紙に住所及び氏名が掲載されます。官報を読んでいる人は殆どいませんが、一応ケアは必要です。
自己破産とは?
自己破産とは、裁判所ですべての債務を免除する手続きです。裁判所を経由するという点では個人再生と同じですが、個人再生は実施後も債務を返済していくのに対して、自己破産ではすべての債務がなくなります。
ただし、その時点で保有している財産は換価(お金に変えること)され、債権者に配当されます。裁判所で定めている基準を超えない財産(自家20万円以下の財産など)については換価の対象とならず、自己破産後も手元に残すことができます。
自己破産ができるのは、「支払い不能」という状態になった場合です(破産法2条11項)。支払不能とは簡単に言えば、現在持っている財産や収入などから判断して、債務を完済することが不可能である状態のことです。債務の絶対額が少なくても財産や収入がすくなければ支払不能と認められますし、債務が多くても財産や収入が多ければ支払不能とは認められません。
自己破産のメリットは、債務のすべてが免除されることです。他の債務整理では、生理後も一定額の返済を行っていく必要がありますが、自己破産ではすべての債務が整理されます。
どの債務整理がいいかわからない場合は弁護士に相談を
上記の通り、債務整理と一口に言ってもいろいろな方法があります。債務が少ない場合は任意整理や特定調停を、多い場合は個人再生や自己破産を選ぶのが基本となりますが、どれを選べばいいかは究極的にはケースバイケースです。
どの債務整理を選ぶのが自分にとって最も望ましいことかよくわからないという場合は、弁護士に相談するといいでしょう。最近は無料相談を受け付けている弁護士事務所も増えてきていますので、気負わず気軽に相談しましょう。
キャッシングの時効まとめ
最後に、今回の記事をおさらいしましょう。
- キャッシング(借金)にも時効がある
- 業者からの借金の時効は原則として5年
- 債務の承認を行うとカウントがリセットされる
- 裁判上の請求があるとカウントがリセットされる
- 支払いを行わずにいると、遅延損害金がどんどん積もっていく
- 時効を狙うのは現実的な判断ではない
- 借金の返済が難しい場合は、債務整理を検討するとよい
そもそもキャッシングに時効があることをほとんどの人は知らないでしょう。金融会社からの借金は10年、個人間の借金は5年という時効があります。ただし、現実に『時効が成立するようなケースは個人間のみに限られます。
キャッシングで借りた借金の時効を狙うというのは現実的な判断ではありません。どうしても返済ができないという場合は、債務整理を検討してみてください。借金が少なくなれば、それだけ毎月の生活も楽になるはずです。